トップページ > 空気と暮らしの研究所 > 三宅康史先生が語る 熱中症予防
人間の体というのは、通常、大体37.5度ぐらいに一定に保たれています。これは、その温度で臓器がいちばんよく働くからです。しかし、周りの温度が暑くて、汗の蒸発などによる熱の放出とのバランスが崩れてしまうと、血流が滞り、体温が著しく上昇します。このような状態が熱中症です。その結果、意識障害やけいれん、頭痛、目まい、手足のしびれ、筋肉の痛み、血圧低下、肝臓や腎臓の障害などの症状が起こり、ひどい場合には死に至ります。体温が42度以上になると、臓器は機能しなくなってしまうのです。
2011年は約900人、猛暑だった2010年は約1,700人が亡くなっています。救急搬送者数については、2010年は約54,000人もいました。
トレンドとしては徐々に増えています。その原因として、皆さんにもご自覚があると思いますが、日本の夏が暑くなっていること、もう一つは全体の人口が高齢化していることが挙げられます。
2011年の夏、節電のため空調をつけなかったのが原因で熱中症になったケースが相次ぎました。
節電によってとくに影響を受けるのは、むしろ働き世代です。昼間働いているオフィスや公共交通機関の設定温度を上げられてしまい、外回りの人などはとくにつらいでしょう。冷たい飲み物を持ち歩くなどの自己防衛策をとるべきです。
そのほかに「熱けいれん」や「熱疲労」という言葉もあり、それらは今でも使われている診断名ですが、医療者の間でも、重症度や対処法が覚えにくいため、「日本神経救急学会」と「日本救急医学会」という2つの学会で、2000年から「熱中症」という呼称に統一することに決めました。さらにその熱中症を重症度に応じてⅠ~Ⅲ度の3段階に分類しています。
まずは高齢者です。それから、持病のある方、乳幼児。経済的な弱者もです。高齢者は、体内の水分量がもともと少ないうえ、暑さを感じにくいことが原因です。さらに汗をかく量も減っており、のどの渇きを感じにくいということもあります。乳幼児は、常に大量の水分を必要とする上に自分から水分摂取ができないので、水分が不足しやすいのです。
若い人は屋外でのスポーツ中や労働作業中に熱中症になることが多いのですが、とくに高齢者はほとんどが家の中で熱中症に陥っています。室内に冷房機があっても、使用していない例が多いのです。 また、とくに都会では防犯上の理由から、夜に窓を開け、網戸だけでは安心して寝られないという状況になっています。空調をつけないと、外気の温度が下がってきても、室内の温度は上がりっぱなしになってしまいます。その結果、翌朝に体調が悪くなっていることに気づく。これは「夜間熱中症」とも呼ばれています。あとは、昼間に熱中症になっていてもそれに気づかず、夜になって病院に運ばれる人もいます。2~3日経ってから症状が悪化し、病院に来る人も結構います。
乳幼児は、保護者が常時見てあげることに尽きます。
炎天下、エンジンを切った自家用車の中に少し放置しただけでも大変なことになる場合があります。
高齢者は暑さを感じにくいので、温度計を置き、温度を28度以下に保つことです。しかし、高齢者同士や高齢者の一人暮らしだと心配なので、周りにいる人が心配して気をつけてあげることが必要でしょう。高齢者は、私たちがエアコン(空調)のスイッチを入れたほうがいいと言ってもつけたがらない人が多いですから。そこが問題なのです。
一般的には、暑さを避けることが熱中症の予防でもっとも大切です。室内でエアコン(空調)や冷房を使うことも含めてです。エアコン(空調)は熱中症予防の特効薬です。なるべく汗が蒸発しやすい服装をすることも効果的です。あとは、こまめに水分を補給することです。
空調が24時間自動コントロールされていれば、もっと確実です。