トップページ > 「きくばり」を私も使っています。 > 酒井しょうこさん
建築面積:42.91m²(12.98 坪)、延べ床面積:71.48m²(21.62 坪)、1 階42.12m²+2 階29.36m²
ほかに屋根裏、バルコニー有り、構造・工法 木造2 階建て(枠組み壁構法)、完成年月 2007 年12 月
しょうこさんのお宅に足を踏み入れると、漆喰色と木目調に統一された内装、家具、小物が織り成す、簡素で質朴としたその世界観にまず圧倒されます。
2004年に聖フランチェスコを生んだイタリア・アッシジを訪れたことが、しょうこさんの人生観を一変させました。
「聖フランチェスコを敬愛し、たくさんのものを持たなくても、シンプルでも温もりのある生活を大事にしているアッシジの人々の生活が、新たなインスピレーションを与えてくれました」
当時、新築を予定していた現在のご自宅は、このコンセプトを貫くため、自ら設計を手がけたということです。
「いちど設計事務所の方に設計をしていただきましたが、やはり生活する者でないと分からないことがあるんですね。
私も妥協を許さないところがありますので、住む自分たちの動線を研究し、何を今の生活で不便に思っていて、どんな間取りならより快適に過ごせるかを、徹底的にシミュレーションしました。大変でしたけど、自分で毎日夜中まで、数ヶ月かかって図面を描きました」
しょうこさんが思い切って全館空調システムを取り入れたのは、美観を損ねるエアコンの室内機を置かなくてよいところが、いちばんの理由でした。イギリス滞在中にエアコンのないインテリアの中で生活したことも影響があったそうです。
「室内にエアコンがあると、そのデコボコとした外観でインテリアが損われてしまいますので、それがとても嫌でした。私にとって、吹出し口や換気口、吸込み口がビルトインされていて、室内機を置かなくてもいい全館空調以外の選択肢はありませんでした」
しょうこさんは、インターネットでアズビルの全館空調システムを探し当て、すぐに神奈川県藤沢市にある「アズビル」のモデルハウスを見学に。家に入ると、すぐに潤った空気が感じられ、これが大いに気に入り、加湿オプションも付けられるアズビルの全館空調システムに決めたということです。
「私は声楽もやっていて、当時はちょうどレコーディングをしていましたが、空気の乾燥がのどにいちばん良くないのです。本当は、ほかのメーカーの全館空調に決められていて、すでに設計もしていただいていたのですが、加湿オプション*1のあるアズビルのシステムを導入するため、ぜんぶやり直す決断をしました。建築士さんも、『アズビルの全館空調はちょっとお高いけど、最高級のものですよ』とおっしゃってくれましたし、昔から母に『高くても良いものを買って、長く大切に使いなさい』と教えられてきましたので」
*1:現在は加湿オプションの取扱いはございません。
しょうこさんが実際に全館空調システムを使ってみて分かったことは、予想以上に健康に良い影響があったということ。「私は昔から大気汚染に弱く、黄砂の時期などは、毎年のように2、3か月もせきが止まらないせき喘息に悩まされていたのですが、全館空調を導入してからというもの、24時間換気で空気がきれいなので、ぜんぜん起こらなくなりました。乾燥時期の肌のかゆみも治まりました。また、驚いたのは主人のことです。かつてはアレルギーで、毎日、朝起きるとくしゃみをしていたのですが、それがまったく出ないのです。健康ってすごく大事ですよね」。ご主人も、「全館空調は車1台分ぐらいお金がかかるけど、健康には代えられないので、それ以上の価値があるよね」とおっしゃって下さっているとのこと。
しょうこさんは、フランキンセンスの香りが大のお気に入りで、よく自室で精油を焚いていますが、吸入口の下で焚いて香りを全館に行き渡らせることもあるそうです。「フランキンセンスの香りが漂う家にしたかったんです。その意味でも、全館空調でなければなりませんでした」。
フランキンセンスとは、日本語では乳香と呼ばれ、古来より「天に祈りを届ける神聖な香り」として、香として焚いて利用されてきました。聖書にも、イエスキリスト誕生の際、博士より贈られたものの一つとあります。精油は樹木の樹液から抽出され、ウッディーな中にほのかにレモンのようなスパイシーな香りを放ちます。現在でも、集中力を高めたいときや高ぶった神経を鎮めたいときなどに効用があり、癒しの香りとされています。
これから家を建てる方に対して、しょうこさんは「どんなインテリアの趣味の方でも、インテリアを壊さない空調機器を選ぶことは大事だと思います」と、アドバイスしています。
(撮影 渡部信光)